座談会03
2024.05.15
医療スタッフのキャリアパスを支える力
歯科衛生士専門学校を卒業後、福山市歯科医師会が運営する障害者歯科チームに所属しながら、他の歯科医院で9年間ほど勤務していました。その後、新しいクリニックの立ち上げを経験し、約2年間勤務しましたが、子育てのために3年間休職しました。一旦復帰しましたが、第二子を出産するため再び休職し、子育てに専念していました。
卒業後、長期療養型の病院で3年間働き、結婚を機に退職しました。その後、急性期病院で2年半働いた後、子供が幼稚園に通うようになったため、デイケア施設へ転職しました。その後、一時的に言語聴覚士の仕事を休止ししていました。
猪原 [食べる] 総合歯科医療クリニックに勤務する直前は、ウェイトレスをしていました。
MTMチームのチーフは、障害者歯科診療で一緒に仕事をしていた仲間でした。ある日、チーフが勤務する猪原[食べる]総合歯科クリニックに来ないかと誘っていただきました。
猪原健先生が歯科往診で施設を訪問した際、「歯科で働ける言語聴覚士はいないかな」と施設の言語聴覚士に尋ねたところ、その言語聴覚士が私の同級生で、私を紹介してくれました。
クリニックを見学した際、卒業後から学んでいたある先生の教えがその土台となっていることに気づきました。私は単なるアシスタントではなく、患者様と真剣に向き合いたいという強い想いを抱いていました。その想いがこのクリニックの方針と一致していると感じ、ここで働きたいと強く思いました。また、子育て中の私にとって、土日が休みであるという点も大きな理由でした。
最初に猪原健先生にお会いした時、私にはその重責にお応えできないのではと思いお断りしようと考えていました。しかし、先ず始めた週1回の勤務から、今までにない新たな経験をすることができ、少しずつ勤務を増やしていきました。
その間、先生の情熱に触れ勤務することを決断しました。
歯科の場合は主に「口の中」を対象にしていますが、猪原 [食べる] 総合歯科医療クリニックでは全身的な健康状態を見ることが重要であると考えています。
そのため、衛生士として患者様の全身の健康状態を把握する考え方がより深まりました。また、以前はインプラントや歯周治療が中心でしたが、こちらではむし歯予防なども重視しており、さらに専門性が向上したと感じています。
病院に勤務していた当時、病院や施設の言語聴覚士(ST)の数が少なく、ある患者様が幾つもの疾患を抱えているケースがり、患者様の症状やリハビリ内容に関する相談ができる人材は限られていました。
しかし、こちらでは嚥下に詳しい先生方が多く在籍しており、皆で討論しながら診療方針を検討することができます。また、稀に難病などの早期診断に関わることもあります。患者様の症状や状態を診ることにより学びも多く、この経験は他では得られない貴重なものです。
毎日のように開かれるカンファレンスでは、難しい症例や診断を行う際には、歯科医師や歯科衛生士などスタッフが集まり、多くの意見を参考に治療方針を決めています。この点が、個人の歯科医院とは異なる強みだと実感しています。
また、衛生士としても、常に学びの場となるカンファレンスで、様々な考え方を学ぶことができるのは大きなメリットとなっています。
私も同意見です。一般的には、歯科医師との距離を感じることがあります。猪原 [食べる] 総合歯科医療クリニックでは、私たちの考えや疑問点など、いつでも相談や確認できる環境があります。隔たり無く先生方と対話ができるのは、他の医院と最も異なっている点だと感じています。
年間に5万円の研修費が割り当てられています。この研修費を活用して、興味のある学会や勉強会への参加や学会での発表など、さまざまな研修活動に参加しています。
研修費は常勤の場合、1人あたり年間5万円が割り当てられており、本人の興味に応じて使用できます。書籍の購入費や学会・イベントへの参加費、交通費などに利用することができます。本人の主体性や学びたい姿勢が重要であり、そのような場合には、積極的にサポートが行われます。
和やかな雰囲気で、素晴らしい関係が築かれています。新人が入ってきても、皆で成長を応援し合っています。
院内では、「最近は本当に頼りになるようになってきたね」という言葉が頻繁に聞かれます。
以前、患者様の健康状態が良くない状況で来院されました。しかし、歯の治療を通じて、患者様の悩みや生活についてもお話を聞き、アドバイスさせていただきました。その結果、アルコールの摂取量が減少し、タバコをやめることができ、入れ歯を入れることができるまでに回復しました。今では、患者様は定期的に通院していただいており、心の健康面でもサポートさせていただいています。患者様の笑顔を見ると私まで嬉しくなります。歯の治療だけでなく、生活環境や生活習慣についてもゆっくりと話し合うことで、生活が改善されたと感じています。
最近の例としては、学会で嚥下調整食として新しい商品を入手する機会がありました。例えば、伊藤園から牛乳パックのような容器に入ったとろみのついたお茶が販売されており、試しに飲んでみると美味しかったんです。この情報を患者様に紹介し、「普通にそのまま飲めるので、とろみを作る手間が省けますよ」と伝えたところ、すぐに受け入れていただきました。このような情報をお伝えすることができ、また、お役に立ててよかったと感じました
現在取り組んでいるのは口腔機能低下症やオーラルフレイル(歯や口の機能が衰えた状態)の方々に対し、医療介入が必要になる前のフレイル(虚弱な状態)の段階で気づくために、口腔機能低下症の検査を進めていますが、まだその範囲に含まれる方は多くありません。しかし、皆さんが健康について興味を持ち、より深く自覚することで、私も医療介入が必要になる前の段階で関わることができると感じています。これは新しい働き方であり、特に言語聴覚士としては珍しい機会であり、歯科ならではの取り組みだと思います。今後も、積極的に関わっていきたいと考えています。
私の目指すところは、もっと若い世代の予防に焦点を当てることです。福山で予防歯科をより確立していきたいと考えています。現時点では、予防に関する認知度が低く、歯のメンテナンスが主流とされていますが、実際にはそのクオリティが保たれているかどうかは疑問です。本物の予防歯科を広め、福山で確立することが私の願いです。これは衛生士の技術とは異なる話かもしれませんが、私の大きな目標となっています。
当院では研修プログラムがしっかりと整備されています。特に私の所属する科では、患者様との対話や実務経験に関するレポートを書き、その内容に対して先輩衛生士からフィードバックを受ける、という形式の交換日記のような取り組みがあります。
このような細やかなサポートがあるおかげで、何か分からないことがあっても、途中入職しても最初から学ぶことができると感じています。このようなサポート体制を整えることは容易ではなく、非常に困難なことだと考えますが、当院では適切なマニュアルが用意され、それに基づいた適切なフォローアップが行われている点が魅力的です。
週休2日で土日が休みであり、有給休暇が取りやすく助かっています。
休暇取得が容易な点は非常に重要だと思います。
また、管理栄養士が在籍しているので、「食べる」という観点から食事と栄養に関することについて学ぶことができるのは、他にはない素晴らしいことだと思います。
さらに、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、言語聴覚士とそれぞれの専門性を生かし、専門分野以外の相談もできるため、視野が広がり一人で悩まずに負担が軽減されるという点も大きな利点です。